柔道整復師とアスレティックトレーナーの違いとは?需要と現状を解説

柔道整復師とアスレティックトレーナーの違いとは?需要と現状を解説

アスレティックトレーナーは、スポーツドクターやコーチなどと連携し、トレーニングからコンディショニングにいたるまで、スポーツ選手を幅広くサポートする職業です。一方、柔道整復師は、骨や筋の治療の専門家で、国家資格を必要とする職業です。それぞれ異なる技術が必要かのように思えますが、アスレティックトレーナーの仕事である「練習や試合現場における救急措置」や「ケガやスポーツ障害からの回復に向けた指導」において、柔道整復師の技術は大いに役立つのです。あらためて両者の違いにふれ、アスレティックトレーナーの需要と現状についても確認しましょう。

アスレティックトレーナーと柔道整復師の現状

まずはアスレティックトレーナーと柔道整復師の現状を、登録者数から見てみましょう。

アスレティックトレーナーの登録者数

アスレティックトレーナーの登録者数は、公益財団法人日本スポーツ協会が公表している公認スポーツ指導者登録者数によると、2020年10月現在で4,331人です。ただし、この数字は資格の取得者数であり、実際に現場でアスレティックトレーナーとして活動している人数とは正確には一致していません。

柔道整復師の登録者数

柔道整復師の登録数は、厚生労働省が公表している「平成30年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」によると、2018年12月末現在で73,017人です。2008年12月末の43,946人から10年間で、約1.7倍増加しています。柔道整復の施術所数も増えており、2018年12月現在は50,077か所と、2008年末(34,839か所)の約1.4倍です。

柔道整復師の専門は、骨折や脱臼など骨や関節に関する治療や術後のケアです。施術の対象はスポーツ選手だけに限らず、一般の人も含まれます。アスレティックトレーナーの登録者数を大きく超えますが、アスレティックトレーナーにも登録している柔道整復師もいます。柔道整復師の活動範囲は、スポーツのトレーナーとしての領域に限りません。医療機関への勤務や開業など、アスレティックトレーナーよりも活躍の機会が多いことも、登録者数の差に現れていると思われます。

アスレティックトレーナー、柔道整復師の需要

続いて、アスレティックトレーナーと柔道整復師の、それぞれの仕事としての需要とその背景を見てみましょう。

アスレティックトレーナーの需要

アスレティックトレーナーの需要を考えるうえで、近年見られる健康志向の高まりは大きな要素になります。日常的に健康でありたい、体力の維持をはかりたいと考える人が増えれば、それだけアスレティックトレーナーが活躍できる可能性が高まります。新型コロナウイルスの影響によりニューノーマルな時代となり、ワークライフバランスを意識する人が増えました。また、リモート勤務になり、働く環境の変化に対応して体調維持を心がけている人も多いでしょう。今後も、気軽に通えるスポーツジムやトレーニング施設などで、アスレティックトレーナーの需要は安定的であると考えられます。

この先、ジムやトレーニング施設の利用者は、より安全で安心、そしてなによりも効果的に、健康や体力の増進、ダイエット効果などが得られるトレーニング指導を求めてくると予測できます。スポーツ施設側も、利用者の要望に応えようと努力するでしょう。つまり、そこで働くアスレティックトレーナーをはじめとした指導者の質やレベルも、いままで以上に問われる可能性があるのです。トレーナーとしての日々の学習や、スキル向上の努力が重要になってくるでしょう。

アスレティックトレーナーの全体像については、「アスレティックトレーナーとは?なり方や魅力、将来性などを徹底解説!」をご覧ください。

柔道整復師の需要

柔道整復師の需要を前述のデータから分析してみましょう。まず、柔道整復師の登録数は年々、ゆるやかに増えているという状況です。施術所や接骨院において、柔道整復師の技術を求める需要は、現状では安定していると判断できます。また就業先となる接骨院からは、柔道整復師が不足しているとの声も挙がっています。これらを考え合わせると、柔道整復師として働く人にとっては、条件のよい就職先を探しやすい状況がしばらく続くといえそうです。

アスレティックトレーナーと柔道整復師の違いとは

もう少し詳しく、アスレティックトレーナーと柔道整復師の違いについて見てみましょう。

アスレティックトレーナーの仕事と資格

おもな仕事の担当領域は「スポーツ外傷、障害の予防」、「練習や試合現場におけるケガの救急措置」、「ケガやスポーツ障害の回復に向けた指導」、「日常生活におけるメンタル、フィジカル双方のコンディショニング」などです。また、「検査や測定などのデータにもとづいたトレーニング方法の改善」や、「健康管理や教育指導」のような選手の実生活の指導や教育も含まれます。

アスレティックトレーナーの資格には、次のようなものがあります。

  • 日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー(JSPO-AT):同協会や関連団体からの推薦を得て、必要な科目を受講し、検定を受ける。
  • ジャパン・アスレチック・トレーナーズ協会認定アスレチック・トレーナー(JATAC-ATC):カイロプラクターほか、柔道整復師、理学療法士などの国家資格保有者であり、規定の教育講座の単位を取得する。ただし、NATA認定トレーナー、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナーの資格を有していれば規定の教育講座受講は不要。または専門学校、大学などで臨床医学系専門科目の単位などを取得すること。そのうえで同協会へ申請する。
  • 全米アスレティックトレーナーズ協会(NATA)の公認アスレティックトレーナー(ATC):アメリカのアスレティックトレーニング教育認定委員会(CAATE)が認定する大学で学士を取得することが前提で、日本人は留学からはじめる資格取得活動となる。

資格の詳細については「アスレティックトレーナーの資格の種類や合格率は?取得すべき資格も紹介」をご覧ください。

ただ、注意したいのは資格中心の視点ばかりにならないことです。アスレティックトレーナーとして仕事を得るためには、やはりスポーツの現場での相応の経験と実績が求められます。資格を取得していても実績が少ないと、アスレティックトレーナーとしての就職や、フリーランスとして活動するのが難しい場合があると考えておかなければなりません。

アスレティックトレーナーの限界

アスレティックトレーナーは、自身の判断で医療行為ができないことも、注意しておくべきポイントです。スポーツの現場での捻挫や脱臼、骨折などで緊急の対応が求められる場合、アスレティックトレーナーができるのは、医療班が到着するまでの間に施す応急措置です。ケガの危険度の判断と医療機関への通報、専門医にかかるまでの悪化を防ぐための処置と限定されているのです。

そのような際に、自身で医療処置ができる医療系の国家資格を持っていれば、より迅速に、より的確な応急処置ができるかもしれません。また、医療系の国家資格を取得しておけば、専門的な立場から、治療や施術範囲を判断し、その後の回復までのケアについて担当できるのです。

柔道整復師の仕事

あらためて、柔道整復師の仕事を確認しましょう。国家資格を所有している柔道整復師は、アスレティックトレーナー以上に、適格な応急処置への対応や、ケガの種類によっては本格的な治療に携われる機会があります。

柔道整復師は、スポーツに限らず、日常生活や仕事中に被った事故による骨折や打撲、捻挫や脱臼などを治療する専門家です。その方法は手術や投薬などを行わない非観血的治療で、代表的なものがギプスによる骨折箇所の固定による治療です。骨折や捻挫、脱臼はスポーツ中に発生する危険性が高いことも、柔道整復師がスポーツ界で求められる背景にあります。

こうした柔道整復師の仕事は医療行為にあたるため、国家資格が必要です。国家資格というと難しそうですが、柔道整復師の養成課程を設けている学校で3年以上学ぶことで、合格を確実なものにできるので、比較的チャレンジしやすい資格です。

柔道整復師の詳細は「柔道整復師になるには?柔道整復師の仕事内容と年収、就職先などを紹介します」をご覧ください。

アスレティックトレーナーを目指しながら、柔道整復師の資格を取得することのメリット

日本の法律上、スポーツ選手の体に触れて直接治療をするためには医療系の資格が必要になります。骨折の処置は適切に行われていない場合、あとで障害が残る可能生があります。医者ならばだれでも対応可能ではなく、骨折や捻挫、脱臼などの骨や関節、筋の診断と治療の専門家が必要で、柔道整復師の資格がそれに相当するのです。また、治療後の回復過程における患部のケアでも、柔道整復師の技術である手技療法や物理療法が役立ちます。このように、柔道整復師は治療から術後のケアまで担当できる専門家です。接骨院や整骨院の開業にとどまらず、一般の病院はもちろん、高齢者施設やスポーツジム、プロスポーツ集団などでも活躍できる国家資格なのです。

その他、アスレティックトレーナーの仕事に役立つ資格

特定非営利活動法人NSCAジャパンは、米国コロラド州コロラドスプリングスに本部をもつNSCA(National Strength and Conditioning Association)の日本支部です。NSCA認定資格のなかに、「健康と体力のニーズに関して、評価・動機づけ・教育・トレーニングやコンディショニング全般の指導を行う、優れた専門的能力をもつ人材を認定する資格」のNSCA認定パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)があります。前述したアスレティックトレーナーの資格ではなく、NSCA-CPTと柔道整復師の資格の両方を持つ方法でも、実践的に選手の個別指導と、ケガや故障時のケアが行えます。

また、鍼灸師の資格もおすすめです。鍼灸師は「はり師」「きゅう師」がそれぞれ国家資格であり、資格保持者はスポーツ外傷・障害の治療や予防に際し、東洋医療にもとづいたツボの刺激による自然治癒力を促す施術を行えます。

鍼灸師の資格に関しての詳細は「鍼灸師になるための資格は必要?その道のりや国家試験について」をご覧ください。

なお、日本健康医療専門学校は、NSCAジャパンのパーソナルトレーナー(NSCA-CPT)の認定校でもあります。日本健康医療専門学校の柔道整復学科、鍼灸学科は柔道整復師や鍼灸師の国家資格を目指しながら、NSCA-CPTを取得することが可能です。

詳細は、日本健康医療専門学校の公式サイトをご覧ください。

国家資格を必要としないアスレティックトレーナーだからこそ、実力を養う努力が重要

アスレティックトレーナーには必要とされる国家資格はありません。言い換えれば、アスレティックトレーナーのアシスタントとして仕事をしながら経験を積み、実力をつければ、職業として名乗れる可能性があるともいえます。しかし、国が定めた資格がないからこそ、利用者が納得し、安心し、信頼できる技術力が求められるのです。利用者の信頼を得るために、民間の資格を取得することをはじめ、国家資格である柔道整復師や鍼灸師の資格を取得しておくことも検討しましょう。アスレティックトレーナーとして将来どのような活躍をしたいのか、持っておくべき知識やスキルを早い段階で知ることが大切です。

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