バズーカ岡田氏に聞く「コロナ後、パーソナルトレーナーに訪れる“希望”とは?」

 バズーカ氏写真.jpg

 

コロナ以降、スポーツ界隈は、暗い話題を耳にする事も増えた。フィットネス業界の未来は、どこへ向かうのか。今回、体育学者でありボディビルダーとしても名高い、岡田隆(a.k.a.バズーカ岡田)氏に正直ベースで話を伺った。すると意外にも、岡田氏の口から紡がれるのは、ほとんどが“希望”の言葉だったのだ。

事実、氏は自身が監修・経営する『バズーカ岡田パーソナルトレーニングジム』、ボディケア&クイックパーソナルトレーニングスタジオ『ACTIVE RESET』をオープンさせ、2021年春には自ら監修した『ライフケア学科パーソナルトレーナーコース(日本健康医療専門学校)』を開講させる。歩みは止まらぬばかりか、勢いが増す一方だ。それも氏が、パーソナルトレーナーという職業に希望を見いだしているがゆえだろう。

今回のインタビューでは、「パーソナルトレーニングとの出会い」「トレーナーが意識すべき“実践力”」「新学科に込めた想い」の順に伺い、希望の正体を探った。「強靱な肉体を持たぬ者に、肉体を語る資格はない」と晩年ボディビルに明け暮れたのは文士・三島由紀夫だが、岡田氏の哲学はそれに通ずる部分がある。幼少期、線の細い体だった岡田氏は、実践によって自ら鍛え上げたのだから。それではまず、氏の筋肉遍歴に耳を傾けよう――。

『コマンドー』の衝撃。肉体が“アート”に変わった瞬間。

【Q】岡田先生が、トレーニングやボディメイクに目覚めたきっかけは、何だったのでしょうか。

――小学1年生の頃に『コマンドー』という映画(1985年公開)を観たのですが、そのときの主人公の肉体美が衝撃的で…。「自分もあんな体になってみたい」と幼心に感じたのが、私の原体験ですね。それまでは、中肉中背で平凡な少年だったんですよ。人が変わるきっかけというのは、とても小さなことなのかもしれません。

その後、強い憧れをモチベーションに、学校の柔道部に入りました。「体を強くしたい」という一心で日々練習に励んでいたのですが、大学時代に膝前十字靱帯の断裂という怪我をしてしまったんですね。治療で理学療法士の方々にお世話になるうち、次第に「スポーツ選手を支えたい」「体を治す支援がしたい」と思うようになりました。

そして、メディカルトレーナーという今に通ずる道が開けたのです。ちなみにボディビルダーになるきっかけも話すと、「ボディビル日本一になるために入学しました」という風変わりな学生がいました。そのとき、私はまだボディビルはやっておらず、その知識も少なかったのです。教え子の熱意に応えたいと思って知り合いのボディビルダーやジムを巡るうちに、新しいトレーニング方法と出会いました。ただ、やはり自分自身でボディビルを本気でやってみなければ深い理解にまでは辿りたけないと思い、私自身もボディビル競技に参戦しました。一周回って『コマンドー』の世界に帰ってきたのは、自分でも驚きましたね(笑)

【Q】スポーツトレーナーから「パーソナルトレーナー」へのシフトには、どんな背景があったのでしょうか。

――スポーツトレーナーというのは、スポーツ選手たちのトレーニング指導やケアを行います。ただ日本代表やプロなどの一流選手に認めてもらえるトレーナーはひと握りで、狭き門です。また、ボランティアで指導やケアを行うケースも、実は多いんですね。将来まで生計を立てることを考えると、門戸が広く、そして「指導料」などの明確な形で報酬をいただける流れが確立されているパーソナルトレーナーは魅力でした。

また、健康への意識は年々高まっています。だから、個人を相手に食事・ボディメイクを指導するパーソナルトレーナーは、需要も伸びているんです。さらに “コロナ太り”などの新たな課題も生まれ、「自分の体は自分で守らなきゃ…」という意識の高まりも感じます。今後さらに世の中から求められる仕事だと思いますね。

 画像2.jpg

厳しい目で見られてこそ、パーソナルトレーニングは進化する。

【Q】岡田先生は、トレーニングにおいて“実践力”を大事にされています。これについて教えてください。

――「何より実践が大事」というのは、英語とも一緒かなと思っています。英単語や文法を覚えたら、会話で実践しますよね。というか、使うために学ぶ。覚えても使わないと意味がない。体作りも同じで、知識を得たら自分ですぐ試す。これが大事なのだと思います。特にボディメイク・ストレングストレーニングの知識は、他の学問と違って、実行に移しやすいのが特徴です。やらないと損ですよね。好きでやっているのなら、「試したくて仕方ない」「試す事で新たな境地に達したい」と思うのが自然と思います。試せるものなのに試さないのは、どこかおかしいですよね。情熱があれば試してしまう。身体をどんどん変えてしまう。そんな情熱のある人じゃないと、他人の身体なんてとても変えられないと私は思います。

それに個人的には、「何かを教わるなら実践者から教わりたい」と考えます。例えば柔道でも、知識だけで頭でっかちな人より、実際に柔道が強い人のほうが信頼できますよね。また自分でトレーニングして体を鍛えていると、日々新しい発見があります。昨日のベンチプレスと今日のベンチプレスは同じに見えて、実は違う。こうした発見は人を指導するとき役立ち、そして発見のある日々は単純に面白い。実践は、仕事力を上げ、仕事そして生活をも面白くする原動力ですね。

【Q】コロナ以降、業界を見る目は厳しくなりました。今後求められるパーソナルトレーナー像はありますか?

――厳しく見られることは、パーソナルトレーニング業界が進化する契機だと考えています。ひとつは、衛生面。感染リスクを減らせるかどうかは、ジムを運営する側の感染制御のリテラシー次第だと思うんです。例えば、複数人と接触しない個室にするとか、消毒を徹底するとか。ジム側が環境・マナーを作り直すことで、お客様から安全であるという理解は得られるはずです。

また、パーソナルトレーナーへの信頼も見直されるでしょう。誤解を恐れずに言うと、パーソナルトレーナーって今は誰でもなれちゃうんですよ。ですが、自分の体を預けて健康を支えてもらうことは、病院に行くのと同じです。それなのに現状、多くの利用者はトレーナーを選ぶ基準を知りません。それってすごく不安じゃないですか? では基準が何かと言うと、成熟した専門職であるならば、まず最初にくるのは「学校で体系立てて学んだかどうか」だと思います。医療国家資格者と同じで「正しい知識をつけ、実践力のある人=信頼できるトレーナー」というのは本来当たり前の事であるべきですし、業界全体がそのようにブランディングし、安全である事を根付かせるべきです。

 画像3.jpg

来たるべき新学科の一期生へ。「伝説になってほしい」。

【Q】2021年4月に、日本健康医療専門学校の『ライフケア学科パーソナルトレーナーコース』が開講します。岡田先生が監修を担当されることになった経緯と、こだわったポイントをお教えいただけますか。

――同校の校長を務めるのは、柔道界のレジェンド・古賀稔彦さん(筆者注:柔道選手としてオリンピックや世界選手権で金メダルを獲得)です。昔から私が心酔し目標とする人物で、学生時代は古賀先生の背負投のフォームを真似しようと、何度映像を見返したことか…。そんな憧れの方と柔道の強化委員会で知り合い、今回「新学科を作る」ということでお声がけいただきました。また私が最も信頼する教え子(八角卓克氏)が新学科の教師を務めるという背景もあり、快諾した次第です。

新学科のカリキュラムを作る際にこだわったのは、「ライフケアの学術的な知識」「ボディメイクの圧倒的な実践力」「ウィズコロナ時代に対応できる医学的な知見」を習得できるようにすることです。ここで学んだ学生たちが時代から求められるパーソナルトレーナーになれるよう、粋を詰め込みました。ちなみに八角氏は国際誌への研究論文掲載、ボディビルダーとしての実績、様々な資格取得と、私が絶大な信頼を寄せる人物なので、ともに作るカリキュラムは胸を張って“自信作”だと言えます。どうぞご期待ください。

【Q】パーソナルトレーナーに興味を持っている学生たちに向けて、メッセージをいただけますでしょうか。

――パーソナルトレーナーを志す学生は、パーソナルトレーナーという指導者の道はもちろん、自身がトップアスリートになるという二つの夢を叶えられる「デュアルキャリア」です。指導者に必要な学問を進めながら、トレーニングを誰よりも深く実践すれば、自ら世界レベルのアスリートになる夢だって同時に叶えることができるのです。健康意識の高まりから、指導者としての需要も伸びていくはずです。スポーツ選手はセカンドキャリアを見つけるのが難しいという現状を考えると、パーソナルトレーナーほど恵まれた仕事はないと言えるでしょう。

そして、願わくは多くの学生諸君が、この新学科でキャリアの礎を築いてくれたら嬉しいですね。2021年4月の開講に向け順次募集も始まりますが、初期メンバーとして歴史に名前を刻めるのは、一期生だけです。私の経験上、一期生はゼロからイチを作るので、数多くの挑戦ができます。その中で、どんな世界でも通用する力が身に付きます。私も学生の挑戦を全力で支えますし、世界に通用する人物がここから出ると信じてやみません。皆さんにはぜひ一期生として、“伝説”になってほしいですね。

 

パーソナルトレーナーコースの詳細はこちら

https://www.niken.jp/news/details_00177.html

<岡田隆氏プロフィール>
1980年、愛知県出身。現在は日本体育大学 体育学部 准教授。また、日本オリンピック委員会 強化スタッフ(柔道)も務める。理学療法士やスポーツトレーナーとしても活躍。「トレーニングは心と身体を鍛えるもの」を信条に、トップアスリートから一般の方までそれぞれに適した身体づくりを提案・指導している。骨格筋評論家「バズーカ岡田」として、数多くのメディアにも出演。ボディメイクやトレーニングの知識・経験をわかりやすく、かつ心に響かせるような言葉で伝えることに長け、「魂のトレーニング伝道師」とも呼ばれている。