スポーツトレーナーになるためにやるべき勉強や積むべき経験とは何?

一流のスポーツ選手でも、コーチやトレーナーを必要とし、むしろ素晴らしいメンターとの出会いが、その選手を大きく伸ばす機会となります。一流の選手は競技の技術を高めたり、基礎体力を向上させたりするトレーニングのほか、引退にもつながりかねないけがの予防や、ベストコンディションを維持するためのトレーニングや体調管理、精神面でのケアを欠かせません。「スポーツトレーナー」は、それらをサポートするプロのトレーナーです。選手生命にも深く関わるスポーツトレーナーになるためには、どのような勉強をして、どのような経験を積むことが必要なのでしょうか。今回はやっておくべき勉強に注目して解説します。

スポーツトレーナーに必要な知識とは何?

スポーツトレーナーには幅広い知識が求められますが、具体的にどのような知識を身に付けておくべきなのか、確認しておきましょう。

解剖学

解剖学は、生物の形態や構造について研究する分野です。具体的には、身体を動かす際に必ず使う手足や腰、それらの形状や動きを支える骨や関節、筋肉の役割と働きについて学ぶことと、理解すると分かりやすいでしょう。スポーツは日常と異なる動きを速い動作と強い力で行うことがあります。また種目により、その使われる身体の部位や筋骨は異なり、偏った使われ方をすることもあります。人間の身体について知ることは、けがの治療のほか、そのけがの防止やコンディションの調整に役立つことになるのです。

生理学

生理学は、生物の体内の諸器官の働きや機能を学ぶものです。スポーツをすれば体温が上昇し、体温を調整するために汗をかきますが、水分や血液、リンパ液と細胞や臓器の役割を知っておくことで、競技やトレーニング中の身体の動きと必要とされる休憩や補給物質などについて理解を深めることができます。体温、心拍数、血圧、発汗などを常時モニタリングし、その経過を読み解けるような知識と経験を積むための基礎学でもあります。

応急処置

スポーツやトレーニングにけがはつきものです。出血や捻挫、打撲や骨折などの場合、専門の医療スタッフが到着するまで、あるいは医療機関への搬送の間、的確な応急処置をしておくことでけがの悪化を食い止め、治療後の回復にも良い結果が期待できます。熱中症への対処も気温や湿度が上昇する季節では重要です。また心肺に関係するトラブルの場合は、人工呼吸や心臓マッサージの方法、AED(自動体外式除細動器)の使い方について学んでおくことは救命率にも関わります。

栄養学

食品とその摂り方、サプリメントと身体の関係、競技に必要な身体の育成やエネルギーの発揮のされ方などについて学びます。一流のスポーツ選手ほど日々の食事には気を付けており、所属する団体では専門のスタッフが関わっていることもあります。スポーツに必要な筋骨、循環する血液やリンパ液などは、三度の食事により補給されるたんぱく質やビタミンなどの成分で作られるのです。栄養学はアスリートの育成に重要な学問です。

心理学

心理学は、人の心の動きと引き起こされる行動などについて学ぶものです。運動能力の向上や競技の成績などと選手の心の持ち方には大きな関係があります。一般心理学のほか、身体づくりや競技へ望むときの心の変化や保ち方についてのスポーツ心理学などを学びます。学問ではありますが、選手の悩みごとの相談に乗ったり、目標達成に導いたりするようなメンターとしての役割を担うためにも重要な知識です。

機材やツールなどの知識

マシンを使ったトレーニングは今や当たり前です。それらのトレーニングマシンも機能の向上や新しい使い方の考案などが日々なされています。そういった知識はもとより、スマートフォンのアプリケーションによる運動中の身体管理のようなICTツールの知識も、これからは不可欠です。身体や競技に使う器具類に装着して、データをリアルタイムに集積できるウエアラブル端末はこれからもますます普及し、利用範囲を広げていくと予想されます。それらのデータ分析の力も求められるようになるでしょう。

スポーツに関する最先端の情報と知識

スポーツにはルールが付き物です。それらのルールや競技のレギュレーションの変更などについて、最新の情報を取得しておくことは重要です。新しいトレーニング方法が誕生し、あるいはこれまで常識的に行われていたトレーニングが、効果の点で推奨されなくなったりすることがあります。また補助で摂取する薬剤や栄養ドリンクなどについても、ドーピングとの関係について最新の情報を押さえておくべき知識だと言えます。

スポーツトレーナーになるための勉強法:独学編

それではもう少し具体的に、スポーツトレーナーの勉強方法について見ていきましょう。

インターネットから情報を収集する

インターネットはアップデートも早く、最新のトレーニングに関する情報を検索の結果から得ることができます。また、トピックの内容について興味のある人が効率的に情報を把握できるように、ポイントを押さえた記事であることも特長です。プロのスポーツトレーナーのブログからノウハウを得たり、それを日常のトレーニングに役立ててみたり試行することは、将来の大きな資産になります。

書籍や論文などからも基礎知識や最新情報を収集する

解剖学や栄養学、トレーニングの理論などについて体系的に、そして深く学びたい場合は、書籍を活用しましょう。入門書から専門書まで自分の学びのレベルに応じて利用できる書籍はたくさんあります。また手元に置いておくことで、内容を確認したいとき、自分の知識を再確認したいときなど、辞書としても参照できるので便利です。すべての書籍を購入するには金銭や保管スペースの問題があるので、公的な図書館、スポーツや医療などの団体が運営する図書施設などで読んだり借りたりする方法もあります。

セミナーやワークショップで体験的に学ぶ

セミナーやワークショップの活用もひとつの方法です。スポーツ関係の団体、用具メーカーなどさまざまな主催者がセミナーやワークショップを開催しています。最新の情報を体験的に知ることができるほか、なかなか実践経験が積めないなか、蓄積した知識が正しいのか、どのように活かせるのかといった疑問や不安も、質疑応答によって解消する可能性があります。同じ目的を持つ仲間と知り合いになれるといったことで、モチベーションのアップにもつながるでしょう。体験的に学ぶ機会を持つことは重要です。

実際にスポーツをやってみる

何よりも大切なことは、自分で体験して知識を経験として積み上げていくことです。自身の骨や筋肉の動き、負担部分、その結果の疲労度合い、その解消の方法など、スポーツやトレーニングを通して学ぶことで、応用力も付きます。プロのトレーナーは、競技のプロフェッショナルである必要はありませんが、多くのスポーツについて体験しておくことは非常に重要です。トレーナーとして働くとき、選手のスポーツについて体験があるのとないのでは相手の気持ちや悩みの理解度に差が出るとも考えられます。また、プロのトレーナーに付いてトレーニングを体験することも有用です。トレーニング指導について触れておくことで、より実践的な指導力が身に付けられるでしょう。

頼られるトレーナーとして学んでおきたい知識

スポーツトレーナーは国家資格が必要な職業ではないので、必ず身に付けておかなければならない学問、知識は定められていません。しかし、多くの人々のサポートをするうえで、頼りにされるトレーナーになるために、知っておきたい知識や資格があります。ここで確認しておきましょう。

柔道整体師、スポーツ鍼灸師の資格

スポーツ中のけがは完治までに時間がかかるものがあり、場合によってはけがが治っても、その後の鈍い痛みや動きの不調などが継続する場合があります。けがの治療やリハビリは、西洋医学をベースにしたものです。その一方で、中国から伝わり、古くから日本でも行われてきた東洋医学による施術もその存在感を増しています。直接的な患部の治療というよりも、身体の筋骨や内臓の働きを促し、結果として身体を良い状態へと調整するという考えに基づいている東洋医学が、スポーツ選手の身体管理において注目されているのです。その代表的なものが鍼灸による治療です。

鍼灸は鍼(はり)とお灸(きゅう)を身体のツボとよばれる箇所に施すことで改善を図る療法です。西洋医学による治療と並行して実施したり、予防や治療後のケアで施術したりします。この伝統的な鍼灸の施術を、スポーツ時のけがや障害の改善に役立てようとするのがスポーツ鍼灸で、それを行う人がスポーツ鍼灸師です。現在、スポーツ鍼灸師という資格はありませんが、鍼灸の資格を持った人がスポーツ分野でその技術や専門知識を発揮する機会が増えています。

骨折、打球、打撲、捻挫、挫傷などのけがでは、手術を行う必要がない場合、痛み止めや回復のための薬剤の投与・服用はあるにしても、基本はギプスやテープでその部分を固定し、自然に回復するのを待つ治療法が用いられます。この整復や固定などの施術を行うのが柔道整復師です。

このようにスポーツ鍼灸師も柔道整復師も、スポーツによるけがや障害と関係性が深い専門家であることが理解できると思います。それぞれその専門家として開業もできますが、スポーツトレーナーがこれらの知識と技術を持つことで、トレーナーとしての活躍の場が広がり、頼りにされる機会も増えます。

ただし、鍼灸師柔道整復師も 国家資格が必要です。スポーツ鍼灸師という資格はなく、鍼(はり)師、灸(きゅう)師の資格を取ることになります。これらの国家試験受験資格を得るには、定められた専門知識を取得するために一定期間、文科省で認められた学校で学ぶ必要があります。スポーツトレーナーを養成する専門の学校には受験資格取得のためのカリキュラムもあるので、必要な知識や技術を習得しながら資格取得が目指せます。

自分自身がスポーツに興味を持ち、身体づくりをすることを意識することからはじめよう

スポーツトレーナーは民間資格であるため、どのような勉強方法が必要なのかは定められていません。言い換えれば、独学でプロフェッショナルになることも可能です。しかし、サポートを必要とする人に、的確なアドバイスをし、効果的な方法を提示し、成果を出せるトレーナーになるためには、幅広い知識を身に付けておかなくてはなりません。生理学、解剖学など医学的な視点をはじめ、心理学といった人の気持ちや精神をサポートするための学問、さらに薬学的な知識や東洋医学に基づいた治療法に至るまで、その知識の種類は限りがありません。つまり資格が定められていない職業であるからこそ、自分自身で知識を習得し、指導者として磨きをかけていく必要があるとも言えるのです。

まずは自分自身がスポーツをするための身体づくりとはどういったことなのかを知るためにも、つねにスポーツに興味を持ち、積極的に最先端のトレーニング方法に触れる機会を持つことが、効果的な学習方法とも言えるでしょう。

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